今回は、児童精神科医の宮口幸治さんが書かれたケーキの切れない非行少年たちを解説していきたいと思います!
この本を読もうとしていたときは、犯罪を犯してしまった少年少女たちが社会復帰するまでの話かと思っていました。
しかし、実際の内容は、日本の学校教育では大人数に隠れて助けることができない子どもたちが大勢いて、その後非行をしてしまうため学校教育のあり方を変えるべきだと警鐘を鳴らしている本だったんです!
自分が担任していた子どもが犯罪を犯してしまったら悲しいですよね。
困っている子どもを救うために、我々教師にできることはなにかを本に書かれていることや私がこれまでの教師人生の経験で得たことを交えながら解説していきたいと思います!
この記事を書いている親育てはこんな人です。
- 現役教師+一児の親
- 教育カウンセリング講座20回以上受講
- 特別支援教育経験あり
- 教育・心理学関連の本を30冊以上読破

ではいきましょー!
反省できない非行少年の共通点

宮口さんは少年院での勤務の経験から、非行少年たちにはある共通点があることを見つけました。
認知機能が弱い
認知機能とは、テストなどで数値化し、確認できる能力のことです。
- 見る
- 聞く
- 想像する
- 覚える
このような力のことです。
ここで登場するのが本書の題名にも書かれているケーキを分ける問題です!
ある非行少年にケーキを3つに分けるように言ったところ、等分することができなかったのです。

(例 ケーキを3等分した図)
このような状態の少年たちに相手の気持ちを考えさせたり、反省を促したりしても意味がありません。
反省以前に、反省する力をつけることが必要です。
認知能力とは逆に非認知能力もあります。
こちらは以前記事に書いていますので、ご覧ください。
感情をコントロールできない
人は怒ると冷静な判断ができなくなってしまいますよね。
非行少年たちはこの怒りのコントロールがうまくできないことによって、認知機能に悪影響を及ぼしています。
些細なことでいつもキレていると、そりゃ冷静な判断なんてできませんよね。
そして、語彙も少ないため、嫌なことがあっても心の中の感情をうまく理解することができず、ストレスが溜まって非行をしてしまいます。
また、怒りの原因としてその人のものの考え方が歪んでいる場合もあります。
例えば、間違いを指摘されたときにどう感じるかは人によって違います。

それ間違ってるよ

ほんとだ、ありがとう!
捉え方が違うとこうなります。

それ間違ってるよ

うるさいな〜!
こういう場合は、その人の癖になっている思考パターンを変えていく必要があります。
歪んだ思考パターンについては以前記事にしているので、参考にしてください!
融通がきかない
融通が効かず、解決策を1つしか見つけることができません。
ですのでこのような特徴が見られます。
- 思いつきの行動をしてしまう
- 1つのことに没頭して周りが見えなくなる
- すぐ答えを出してしまうため、最適解を見つけようとしない
ですので、被害感を強くなります。

ねえねえ、昨日のテレビ見た?

・・・

なに無視してんだよ!!
このような状況になったときに、
- 聞こえなかったのかな
- 今日は機嫌が悪いのかな
- 具合悪いのかな
このように考えることができないということです。
不適切な自己評価
非行少年たちは自分のことをよく分かっていないため、正しい評価ができません。
例えば殺人を犯した人でさえも自分のことを優しい人だと答えるそうです。
他にも
- 何もできないのに自信がある
- 何もしてないのに自分に満足している
- できているのに不満がある
など、本当の自分とはかけ離れた評価を下しています。
自分を知らないと反省も努力をできません。
だからこそ、まずば自己を受け入れるところから始めていく必要があります。
コミュニケーション能力
ここまでくるとわかると思いますが、認知機能が弱いと他者とのコミュニケーションもうまくできません。
しゃべっていることのほとんどが聞き取れなかったりよく分からなかったりするからです。
また、感情のコントロールもままならないため、話をしていて突然キレてしまつまたりイライラしてしまったりするので、当然誰も話そうとは思わなくなります。
軽度な障害や困っている子は学校現場に隠れている

このような子たちというのは、実は少なくなく、クラスに隠れていると宮口さんは述べています。
クラスにこのような子たちはいますか?
- 忘れ物が多い
- 嘘をつく
- 座っていられない
- 集中力がない
実はこれらの特徴というのは、非行少年たちの学生時代の様子なんです。
つまり、非行少年たちは特別ひどい生活をしていたわけではないんです!
診断をもらえない
現在の知的障害はIQ70未満を基準として、総合的に判断しています。

(厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト E-ヘルスネット)
しかし以前は、IQ70〜85未満の時代がありました。
定義が変わっても困っている子どもたちがいる事実は変わりありません。
およそ、35人のクラスに約5人はいる計算になるそうです。
後ろから5人は生活になんらかの困り感をもっている可能性があるということです。
知的障害や発達障害の診断があれば周りの理解や学校現場の協力も得られやすいのですが、そういった子たちに診断がつかないのが現実です。
発達障害について以前詳しく解説しているので、そちらをご覧ください。
社会で生きていくための解決策

これまで非行少年たちの課題について解説してきました。
そういった子どもたちの困っている部分を救うために教師ができることにはなにがあるのか、本書で書かれていることや私の実践も交えて解説していきます。
ソーシャルスキルトレーニング
対人関係についてのスキルはソーシャルスキルトレーニング (STT)で経験値を増やしていきます。
低学年のうちに特別活動の一環として取り組んでみるといいでしょう。
例えば、すごろくのマスにできごとが書いてあり、その出来事が起こったらどうするか演じてみるというようなゲームがあります。
例 友達が他の人と自分の話をしているのが聞こえた。なんと話しかける?
勘違いしそうな場面が起こる前に練習することで、思考のパターンが増えます。
みんなで取り組むと、他の子どもたちの考えも聞くことができるので、なおいいでしょう。
他にもカードに書かれたお題に挑戦するゲームもあります。
例 友達が消しゴムを拾ってくれた。理由も付け足して「ありがとう」と伝えましょう。
こうすることで、誰かになにかしてもらったときには「ありがとう」と伝えることを覚え、スキルとして身につけることができます。
SSTについての本は数多く出されているので、ぜひ試してみてください!
認知行動療法
認知行動療法とは、歪んだ認知を変えて、行動を正していくというカウンセリング療法です。
先ほど共通点のところでもありましたが、非行少年たちは思考パターンに偏りがよくみられます。
- 100点じゃなきゃだめだ
- 一度の失敗で何にもうまくいかないと決めつけてしまう
こんな子どもいませんか?
これも認知の歪みからきているものです。
具体的なことは認知行動療法の記事にまとめています。
そちらぞ是非参考にしてください!
認知能力の向上
認知機能の向上も重要になってきます。
漢字や計算ができない子は、ものを写す力、数えてまとめる力など、それ以前の認知能力が弱いのでつまづきます。
そういった基礎的な認知能力を育てるために著者の宮口さんが考えたコグトレというものがあります。
例えば写す力を身につけるために、点と点で結ばれた絵のお手本を紙に写すといったトレーニングがあります。
物を見てその通りに写す力をつけて、初めて漢字の覚えたり書き取りができたりします。
他にも覚える力を身につけるために、4✖️4のマスの中にランダムに置かれた数字を覚えてどこになんの数字があるのか答えるといったトレーニングもあります。

例 (覚える問題 数字はどこ?)
さらに詳しい知りたい方はコグトレの本も出ているのでそちらをご覧ください!
まとめ
今回の記事のまとめです。
- 非行少年には共通点がある
- そういった少年たちはクラスに隠れている
- ソーシャルスキルを身につける
- 認知行動療法で認知を変える
- コグトレで認知機能を高める
さて、今回はケーキの切れない非行少年たちを解説しました。
学校は決まったカリキュラムがあるので、好きなことを授業することはできません。
しかし、この記事でも解説したように、教師にできることもあります。
少しでも困り感をもつ子たちが社会で生きていけるように、これからも子どもたちと関わっていきたいと思いました。
みなさんの役にもたてると嬉しいです!
ではまたっ!!
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